ポータブル測定の威力:3Dレーザースキャニングにより、金属成形プロセスを開始から仕上げまで強化する方法
FARO Technologies製品マーケティング担当ディレクターOrlando Perez
製造の一分野である金属加工の中でも、金属成形は、家庭で使われる消費財の金属プレス加工から、航空機や自動車の構成部品に至るまで、幅広い部品の組み立てに関わる基本的な工程です。多くの製品が関係し、数十億ドルものお金がかかるため、正確さ、精度、再現性が重要となります。
米国が新型コロナウイルスのパンデミックから立ち直り、2019年に2200億ドルと評価された世界の金属プレス加工市場は、2020~27年には2.8%の年平均成長率を実現すると予測されています。また、同じく2019年に840億ドルと評価された世界の鍛造市場は、同じ2020~27年の期間に5%の成長率を達成すると予測されています。同様の国際的な復興状況は、他のセクターでも感じられることでしょう。国際通貨基金はGDPの伸び率について、1月の予測を上方修正し6%になると予測しています。こうした成長環境においては、生産の失敗、コストのかかる手直し、公差外の製品、安全性の問題を発生させることはできません。
それ故に、非接触ポータブル測定器のScanArm技術による3Dレーザースキャニングとその品質保証・検査ソフトウェアは、品質エンジニアにとっては、個々のパーツが元のCADデザインや設計図と一致していることを保証するだけでなく、最終的な完成品の形成を担うプレスや成形、金型の機械が確立された仕様通りに動作していることを保証するためにも、必須のツールであり続けています。これは、スタンピング(本質的には、素材を破壊することなく高圧をかけて形状を変える能力を反映した変形プロセス)や、オープンまたはクローズドの金型を使用した「火を使ったスタンピング」(高熱を思い浮かべてください)によく例えられるフォージング(鍛造)の場合にも言えることです。
プレッシャーから解放する
最新のScanArm技術と多軸型スキャン用ターンテーブルプラットフォームにより、精密な測定がより早く、より簡単にできるようになりました。仕組みはシンプルです。多関節のポータブル座標測定アーム(PCMM)に非接触レーザーを取り付け、X、Y、Zの座標をリアルタイムで測定し、その3Dデータを仮想環境でデジタル化します。ScanArmの場合は、レーザー光がスキャンされた部分で反射してカメラに入り、そのデータを記録することで、3D点群(スキャンされた面全体のX、Y、Z座標を含むデジタル化されたモデル)を作成します。
この一対の技術(ScanArm/レーザーとターンテーブル)と、強力かつユーザーフレンドリーなソフトウェアとを組み合わせると、規準状態から逸脱しているコンポーネントの性質を即座に特定できます。これにより、公差外の状況が発生する前に素早く機械調整することが可能になることで、製造工程内のコンポーネント検査を実施し、さらに設計図やCAD図面がないリバースエンジニアされた部品のための正確なデジタル測定データを取得できます。
金属成形のワークフローの観点から見ると、現在の高度な3Dメトロじ―に基づくハードウェアとソフトウェアのソリューションは、時間のかかる作業を行うためにノギスやマイクロメータといったエラーを起こしやすい手動式測定器に頼っていたためにかつては面倒だったプロセスを大幅に合理化しました。ただし、それが実現できればの話です。金属のプレス加工は、その性質上、複雑で多段階にわたる作業であり、多様な製品を生み出します。そうした製品の多くは、測定が困難な「有機的」または不規則な形状を含んでいます。
固定式の3次元測定器であっても、なかなか測定できないのです。同種のPCMMとは異なり、CMMは大きくて動かせず、高度なエンジニアリングプログラミングの専門知識が必要で、温度制御された特殊な計測室に設置されています。おそらく最も重要なのは、固定式の CMM は仕掛かり中の部品(または機械)を測定することができないということです。製造された部品をそこに運ぶ必要があり、検査のボトルネックや追加コストが発生します。
例えば自動車では、ボディパネルやフレーム、ドアのほか、種々の小さな部品を作る際にプレス加工が行われます。航空機にも、構造部品、酸素発生装置、軍用機のハウジングやエンクロージャー、リレー、スイッチ、照明装置など、多くのプレス加工部品が使われています。金属成形プロセスを評価し、その各段階で3Dレーザースキャンをどのように役立てるかを検討する際には、いくつかの要素を考慮する必要があります。
- 設計機能に対するスタンピング(プレス加工)の影響 – スタンピングされた部品は、CADモデルにおいて指定された公差内に収まっているか? これは初回品検査にも、後続検査にも同様に言えることです。
- プレス加工された部品は仕様内に収まっているか – スキャンソフトウェアからのデータは、部品が公差外の傾向にあるかどうかを判断するのに役立つ統計的工程管理(SPC)システムに投入することができます。
- 金型は同じ仕様の部品を一貫して生産しているか – あるいは、工具の摩耗によって部品が公差外になる傾向があるか。その場合、金型自体の3D測定検査を行う必要があります。
- 安全第一の満足度 – 部品は安全で機能的であり、業界固有または国の要件に適合しているか?
- 生産と品質管理のために必要となる時間はどれぐらいか – 廃棄を減らして処理能力を高める価値とは何か?
うまく機能するワークフローの妙技
以上のように、3Dレーザースキャンは、金属成形のワークフロープロセスにおいて不可欠な役割を果たすことができ、またそうした役割を果たすべきだと考えています。レーザースキャンは、製品が完成するまでの各段階において、個々の部品や構成要素、そして機械そのものの測定のスピードと質を大幅に向上させることができます。
レンズを引き戻し、金属成形のワークフローがどのようになっているかをわかりやすく説明します。
ステップ1 エンジニアリング:設計エンジニアと金属加工作業者が、ドーム、円錐、半球、四角、アイボール、楕円など、さまざまな形状や物体を開発するところからプロセスが始まります。開発されたものは、金属成形用の金型を作るために使用されます。
ステップ2 承認とアクション:承認された製品図面と金型が作成されると、処理工程は金属プレス加工チームに移ります。ここでは、スタッフが製品図面を評価し、どの金属プレス工程と機器を使用するかを決定します。
ステップ3 カスタマイズされた作業:図面、金型、設計図を用意して、金属プレス加工に着手します。必要なツールやサブステップは、プレスする製品、使用する素材、生産規模によって異なります。
ステップ4 組み立て:製品の複雑さに応じて、組み立てが行われます。つまり、構成部品をプレス加工された製品に合わせて組み込む作業であり、結合、溶接、曲げなどが必要になる場合もあります。組立後は、製品が完成する前にすべての製品の精度を検査することが重要です。3Dレーザースキャニングソリューションは、このような場面で威力を発揮し、コスト軽減と効率化に貢献します。
ステップ5 完成:組み立てを完了後、機械加工により製品を仕上げる場合があります。機械加工には、タッピング、ドリル、ソーイング、ミリング、グラインディング、サンドブラストなどがあります。さらに、塗装、封止、下地処理などを行って完成です。
Q3のジレンマに「ノー」を言う
これらのステップがすべてチェックされた後の最終検査では、金属成形品が公共用または産業用に使用できる状態になっていることを確認するとともに、機械のダウンタイムを減らし、材料の廃棄によるコストを削減することで処理能力を向上させて、収益を確実に最大化させます。
世界の多くの一流エコノミストによると、今月(7月)から始まる2021年第3四半期は、世界が不安定な状態から正常な状態に戻るための最初の一歩を踏み出す期間であるとしています。そして、この第3四半期は、世界経済が6%の成長予測を達成するために必要な力を蓄え始める期間でもあります。
消費者が「新型コロナウイルスへの備え」を消費し始める中(ブルームバーグ・エコノミクスの試算では、米国人はコロナ禍対策として総計1.3兆ドルにもなるお金を貯めている)、金属成形業界は今こそ事業を本格化させるべきです。生産してきた製品とそれを生産した生産機械が、期待される許容範囲内で稼働していることに自信を持ちつつ、事業を展開すべきなのです。品質管理に欠かせない水準を確保するためには、3Dレーザースキャニングのソリューションとそれに付随するソフトウェア製品を利用するのが最善の方法です。
ポータブル測定の威力は、かつてないほどに強力なものです。