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速さと正確さのトレードオフの終焉:3Dレーザースキャナー業界が享受するメリット

Hybrid Reality Capture
「タスクをシンプルに実行し、より速く、より良く、より簡単に仕事を終わらせる方法を探し続けましょう」— Brian Tracy、モチベーショナルスピーカー、自己啓発書の著者。

ここ数か月、いたるところで人工知能に関する議論が行われているようです。最近AIが注目されている理由の1つは、OpenAI(ChatGPTの開発元)などの企業が、計算科学、生物学、機械科学の分野で知られている「速さと正確さのトレードオフ(SAT)」を解決、あるいは少なくとも大幅に緩和しようとしていることです。

現代のAIは、まだ完璧にはほど遠いものの、速さと正確さの両方を維持しながら自然な会話に近づけることができるようになっています。コンピューターのデータ取得速度で人間のやり取りを模倣しているのです。この速さと正確さのバランスは、3Dレーザースキャニングや、それに関連する360°パノラマ写真、写真測量法などにも同じように存在します。

従来の3Dリアリティキャプチャにおいて、高精度のスキャンではデータ取得に数分かかり、情報の処理と点群データの登録にさらに長い時間がかかることがありました。スピードを犠牲にしてでも、精度を高めているのです。大規模なスキャンを実行しようとしている企業にとって、これはビジネス上の損失となる可能性があります。一方、パノラマカメラは高速で撮影できる反面、得られるデータは3D点群データよりも詳細さに欠けています。これは精度を犠牲にすることで速さを実現しているからです。

しかし、AIの研究が速さと正確さのトレードオフの終焉を示唆しているとしたら、次に影響を受ける分野は何でしょうか?建築、エンジニアリング、建設、運用保守、公共の安全のための事故防止計画などの用途の3D視覚化を含む3Dレーザースキャン業界は、ここでも勝利を収めようとしています。

スキャンを待つ世界

今日、As-Builtドキュメントに携わる人々は、仕事を完了するためのより速く、より良く、より簡単な方法を絶えず探しています。速さのために品質を犠牲にすることなく、品質のために速さを犠牲にすることなく、タスクを簡素化し、ワークフローを合理化しようとしています。

なぜ速さと正確さを兼ね備えた「究極の理想」を求めているのでしょうか?それは専門的な計測サービス業界全体が多くの仕事を抱えているからです。また、BIMモデルが正確でなかったり、画像の取り込みや処理速度が遅すぎたりすると、多くの時間、費用、人的・技術的リソースが危機にさらされてしまいます。世界中の各業界で、大規模建造物の内部と外部のスキャンが行われています。一例をあげると、発電所などの産業施設のマッピングや計測、警察や法執行機関による事故防止計画の支援、専門業者やゼネコンのエンジニアリングプロジェクトの支援、そして施設管理者/所有者に必要なリアルタイムの施設管理インサイトを提供することで、建物の運用状況を追跡し、発見された非効率性を合理化および排除することを可能にします。

ご想像のとおり、速さと正確さのトレードオフを解決するための探求は、最終的に2つの異なる道を歩むことになりました。それは、モバイルスキャン製品と、三脚に設置した静止型3Dレーザースキャナーです。

しかし、開発によってSATの「戦い」が終わりを迎えるのではなく、影響力が競合する2つの領域が生まれただけだったのです。ケンブリッジ大学が実施し、ギリシャのロードス島で開催された2021 European Conference on Computing in Constructionにて共有されたFARO Focus Laser Scannerを含む反復研究は、モバイルスキャンは高速であるものの静的スキャンほど正確ではないことを確認するものでした。

論文の結論には次のように書かれています。

「本実験において、スキャンしたターゲットの密度は、ターゲットまでの距離が長くなるにつれて指数関数的に減少した。この点でモバイルスキャナーは静的マッピングデバイスよりも優れていることが示された。精度に関しては、傾向は逆である。静的スキャナーは、モバイル機器によるスキャンと比べて20倍以上ノイズが少ないスキャンが可能だった。どの機器も、建物の測量や地形調査、低精度なセッティングなどのユースケースでは40mまでのほぼ全域で精度仕様を満たすことがでたが、工事測量のようなより厳しいユースケースは静的スキャナーでなければ満たすことができなかった。」

ハイブリッドコンピューティング2.0

1960年代のNASAで、人間とコンピュータが「ハイブリッド」とみなされていたとしたら(宇宙機関のメインフレームであるIBM 7090は人間よりも高速でしたが、天才ほど正確ではなかったため、重要な打ち上げと再突入のデータを処理するために「計算手」が雇われました)、3Dリアリティキャプチャにおけるハイブリッドとは、2種類のデジタルフォーマットが結合されたものを意味し、モバイルスキャンの優れた点と静的リアリティキャプチャの優れた点を統合することで実現します。

この統合は新技術によって実現されるもので、現在特許出願中です。このハイブリッド技術では、パノラマ画像に含まれるデータをアルゴリズムで結合し、静的な3D点群データと組み合わせることで、低解像度の3Dレーザースキャンに360°カメラからの撮影データを追加します。その結果、速さと正確さの両立を実現することができたのです。

速さと正確さの低下を最小限に抑えたモバイルスキャンと静的スキャンのハイブリッド化は、3Dスキャニングソリューションの次のステップとなります。従来のレーザースキャンのワークフローよりも最大50%高速な技術がもたらすものを考えてみましょう。これは、現場の生産性、予測可能な精度、優れた視覚的鮮明さの組み合わせを、非常に手頃な価格で提供するものです。

この統合がもたらす利点は明らかです。

  • 精度を落としたスキャンでは、従来のスキャンよりも大幅な高速化を実現。
  • 密度の低いデータセットを補強する360°画像により、ワークフローを高速化してプロジェクトを確実に完了。
  • 1週間あたり約1日分の時間を短縮することができ、速度と時間の短縮がなければ行われなかったスキャンを追加で実行できることで、より完全で包括的なプロジェクトを実現。
  • カラー画像により、対象物のコーナーやエッジをより明確に確認でき、定義された形状をより簡単に識別できるため、他のソフトウェアに比べて詳細な分析と実行が可能。

最初のレーザースキャナーは1960年代に開発され、ライト、カメラ、プロジェクターを使用して対象物をスキャンしていました。しかし、これは時間がかかり、誤差が生じやすいものでした。今日の3Dレーザースキャン業界を実現するのにつながった技術革新は「進化的」と言えますが、速さと正確さを損なうことなく静的スキャンデータとモバイル360°画像を統合する技術は「革命的」と言えるでしょう。

従来のスキャンよりも最大50%高速で、実質的にデータ品質が低下しないリアリティキャプチャソリューションは、建築、エンジニアリング、建設、運用保守から公共の安全に至るまで、大規模スキャンに依存している業界が、高速かつ正確で信頼性の高い方法で何千ものスキャンを行い、そのデータを業績向上や状況に応じた成果の達成(大規模建造物の出入口や障害物の位置をすばやくスキャンするなど)に活用することを可能にします。世界には約1,000億の建物があり、そのうち大規模な建築物がかなりの割合を占めていることを考えると、物理的な世界からデジタル世界への変換を加速させる機会はかつてないほど大きくなっています。

この技術は、まるでNASAの計算手が、現時点で世界最速のコンピューターであるFrontierにアクセスし、1秒あたり100京回の浮動小数点演算を行い、100%正確であるという完全な信頼を獲得したようなものです。

ニューフロンティア

物理的フロンティア、生物学的フロンティア、機械的フロンティア、計算/デジタル的フロンティアのいずれも、今日の最速のコンピューターやこれまで以上にスマートなアルゴリズムによって限界が押し広げられています。数千年前に東地中海の肥沃な三日月地帯に最初の都市が誕生して以来、今日に至るまでその真実に変わりはありません。人類がこの世に存在する限り、大規模で複雑な構造物が構築され、迅速かつ正確な組み立てと長期的なプロジェクトの監視が要求されます。また、公共の安全の分野では、最悪の事態を事前に軽減する必要性が消えることはありません。

この2つの現実を考えると、3Dレーザースキャニングは進化を続けていくでしょう。速度と精度が向上するだけでなく、機器のサイズ、重量、体積が減少し続けるはずです。アプリベースのLiDARスキャンについてはここでは割愛しますが、将来的には、汎用的な技術の進歩がスマートフォンやタブレット程度の大きさで実現されると思われます。

IBMが今年末に予定している1,000量子ビットを超える世界初の汎用量子コンピュータが実現する未来と合わせて、このニューフロンティアは、今後数十年の間に、速さと正確さのトレードオフをはるかに押し上げるものになると思われます。

しかし今のところ、Hybrid Reality Captureは、3Dレーザースキャン業界が活用し始めたばかりの技術的ブレークスルーです。速さと正確さのトレードオフは、長い間さまざまな分野の本質的な問題点でしたが、その解決策を模索する課題が増えつつあります。英国の著名なSF作家であるアーサー・C・クラークは、良く引用される次の見解で知られています。「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」

しかし真の意味で、このクラークの言葉は、魔法がどれほどエキサイティングなものであるかということについては何も語っていません。もしあなたが、その魔法を実現させる夢想家の一人であるならば。

執筆担当

Oliver Bürkler

Oliver Bürklerは、FARO Technologies, Inc.のレーザースキャニング担当ディレクターです。彼は、ドイツのミュンヘン専門大学で精密工学と経営管理&工学の修士号を取得しています。FARO 3Dレーザースキャナープロダクトマネージャーチームの一員として、FAROの3Dドキュメントハードウェアおよび関連する新しいイノベーションの開発に注力しています。

この新しい技術とそれが貴社のワークフローにどのように役立つかについて、興味をお持ちですか?

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